2016年7月1日

『古代ローマ人の24時間』でA.D.115年のローマにワープする

前回の『古代ローマの生活 (角川ソフィア文庫)』に続き、古代ローマの庶民の暮らしぶりを知れる本を読んでみました。



NHKのタイムスクープハンターの古代ローマ版といった感じでした。
紀元115年のとある火曜日の夜が明ける頃、トラヤヌス帝の治世下におけるローマの街に降り立ち、丸一日かけて見学したリポートといった感じです。

単なる空想ではなく、考古学的研究や発掘調査、文献研究などによる膨大な資料に基づくものなのでリアリティがあります。

細かく丁寧な描写のおかげで、実際に古代ローマの一般庶民の生活を覗いているような臨場感を味わえます。一気におもしろく読めました。(長いので途中少しダレましたが。。)

古代ローマの生活 (角川ソフィア文庫)』でも驚きましたが、今から1900年近くも前の古代都市ローマが想像以上に大都会で、文化的にも進んでいたことに驚きました。

インスラと呼ばれる、現在の都会のマンションのような集合住宅が所狭しと建ち並び、それでも住むところが足りないので家賃が高騰し、違法建築が横行していたとのこと。というのも、異民族が大挙してローマに押し寄せたことで人がごった返し、住む場所もままならない状態だったようです。この時代からすでに移民問題を抱えていたなんて驚きです。
ありとあらゆる民族、宗教、食べもの、物品がひしめきあい、普通に歩くことすらままならないカオスな状況だったようです。

富裕層の女性はこのころからすでに美容に気を使っていて、美顔パックをしたり、アイラインやアイシャドー、まつげのボリュームアップなど、念入りにメイクをし、ヘアアイロンで巻き髪作るなどしていたそうです。1900年も昔から、材料や道具は違えども、やっていることは変わらないんですね。
男性でもムダ毛の処理をしたり、白髪を染めたり、薄毛を隠すために煤で頭皮を黒く塗ったり(スーパー○リオンヘアーだ!)していたそうです。

現代の大都会とそれほど変わらないように思える社会ですが、家電製品など、テクノロジーを駆使した設備や道具はもちろんありませんから、そのかわりに奴隷が利用されていたんだとのこと。実際、古代ローマ都市は奴隷で成り立っている社会だったんだそうです。
奴隷は、市場で特徴を記したカードをぶら下げて「陳列」させされて売買されたのだそう。都会の奴隷はまだマシだったようですが、農地の奴隷は牛や犬に近い扱いを受け、悲惨な生活を送っていたようです。労働用の家畜が「音声を発する道具」で、奴隷は「話すことのできる道具」と定義されていたといいますから、もはや人間ではないのですね。絶望的な気持ちになりました。

コロッセウムでの剣闘士と公開処刑の話も、読んでいてどんよりした気持ちになりました。グロいので詳細は書きませんが、これを普通の一般庶民が楽しんで見ていたとのことで、ドン引きしましたが、現代人もグロいホラー映画を喜んで見ているのだから同じことなのかなとも思いました。

性に関する記述も、現代では考えられないことばかりで興味深かったです。ただ、性に対してオープンで同性愛もなんら問題視していないほどなのに、独特のルールがあったりして、私にはいまいち理解できなかったです。



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