タイトルと表紙の雰囲気に惹かれて読んでみました。
1986年に初版発行されたものなのに、なぜか、またここ数年の間に売上を伸ばしているということで話題になっている本らしいです。
古代都市で繰り広げられるSF旅ファンダジーだと勝手に思い込んで読み始めたのですが、全然違いました。
地球に似たある架空の星に生きる一人の男(ラゴス)の20代半ばから晩年までの人生を描いた物語でした。
時代設定も、古代ではなく、中世より後の、産業革命が起こる前ごろのようです。
「超古代文明」と、「西遊記」と、「仁」をミックスしたような印象を受けました。
ある地球に似た架空の星では、特殊な能力を身につける人が現れ始めています。
集団で同じ場所をイメージすることによってテレポーテーションできたり、相手が心に思い浮かべた顔になれる男や、聞いたことを声色を含めて丸暗記できる少年など、様々な特殊能力を持った人が登場します。
これらの能力は、人類が突然高度な文明を失ってしまった替わりに獲得し始めたものらしいです。
青年ラゴス(おそらく20代半ば)は、「ある物」を求めて、産まれ育った北方の都市から南方へ旅をします。道中様々な人々に出会い、生死を左右するような困難を乗り越え、「ある物」を手にしてまた故郷を目指します。故郷へ戻った後は「ある物」により大活躍し、ひとしきり活躍した後、70歳を目前にして別の目的のために再び旅立つのでした。
「冒険」ではなく、「一人の男の人生」に焦点が当たっているせいか、手に汗握る、というよりも、淡々とこなしていく、という感じの物語でした。それはそれで、一気読みするほど面白かったのですが、モヤモヤ感が残る箇所がいくつかありました。
まず、ラゴスが女性にモテすぎます。人格的にいい男なのはわかりますが、相手がまだあどけない少女だったりするので、結構引きます。(もちろん美少女)しかも、常に女性側から想いを寄せられ、気乗りしないけどしょうがない・・・みたいな展開なのも、ちょっとイラっとします。
それから、生まれや、困難な性格のせいで不遇の人生を歩む人が、不遇のまま犯罪者になったり、あっけなく死んだりして、救いがありません。(ちなみに、ラゴスはエリート一族の都会人)
というわけで、私はラゴスをあまり好きになれませんでしたが、数年後読み返してみると、また違った感想を持つのかもしれません。