2016年5月21日

古代ローマの庶民の日常生活を知れる本『古代ローマの生活』

おもしろい本を読みました。

ローマ時代のうち、共和制末期から帝政期にローマで暮らしていた人たちの生活の様子を、人口、住宅、寿命、性、愛、結婚、出産、老後、死、服、おしゃれ、医療など28のテーマに分けて紹介されています。
歴史の教科書に載らない一般庶民の日常が良く伝わってきて興味深いです。

倫理観が現代とは大きく違っている面はありますが(新生児の遺棄が珍しくなかったり、処刑を見世物にしたショーが人気だったり)、一般庶民の基本的な人生観は、現代人とたいして変わらない気がしました。それが逆に驚きでした。

ローマ時代の食事風景というと、享楽的にひたすら飲んだり食べたりしていたようなイメージがあり、食べものには困っていなかった印象がありましたが、それは一部の上層階級の人たちに限ったことだったようです。
したがって、飽食のローマというイメージは、やはりごく一握りの金持ちにのみあてはまるものだったということをここで想起するべきでしょう。昨夜の饗宴の残り物を施してもらうべく、挨拶がてら朝早くからパトロンの門前に列をなす庶民たちの姿こそが、市井の現実だったのです。
P185

興味深い話はたくさんあって書ききれませんが、特にほお!と思ったのはヘアスタイルの話で、もうこの時代から女性は髪を染めたり、かつらを被ったりしていたんだそうです。ゲルマン人のブロンドから作られたものがとくに人気があったとのこと。いつの時代もブロンドヘアは人気なんですね。
また、鬘も使用されていたようです。ゲルマン人のブロンドから作られた鬘はとくに人気があったといいます。
P200
薄毛の男性についての記述も興味深いです。
とは言え、禿げに悩む男たちは今も昔も少なからずいたわけで、あのカエサルは容赦なく後退する額の生え際のことを、政敵だけでなく味方からも決まってからかわれていたこともあり、ひどく気にかけ、常日頃から乏しい髪の毛を頭のてっぺんから額のほうへ撫で下ろしていたそうです。彼に贈られたあらゆる名誉のうち、月桂冠を終身かぶれる(禿げを隠せる)という権利ほど、彼が喜んで受け取り活用したものはなかったといいます。
P201
あのカエサルが薄毛を気にしていたなんて、ちょっと親近感がわきます。



読者に語りかけるような穏やかな感じの文章で、内容も小難しさがなくとても読みやすかったです。
おすすめです。



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