図書館で新刊のコーナーに、このきれいな装丁の本が並んでいました。
思わず手に取ってみると、子供の頃に読んだ『ドリトル先生航海記』で、
なんと『福岡伸一 訳』と書いてあります。
『生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)』や、
動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』の著者、福岡ハカセですね。
児童文学の翻訳までなさっているとは驚きました。
物語は、研究して動物のことばを話せるようになったドリトル先生と、
先生を頼ってやってくる動物たちと、
先生の助手として働くことになったスタビンズ少年が繰り広げる大冒険です。
ここに出てくる動物たちは、単に人間に可愛がられるだけの存在ではなく、
自主的に家のことをいろいろやります。
例えば、アヒルの「ダブダブ」は優秀な家政婦で、家事が上手です。
犬の「ジップ」と手分けしてシーツを干したりします。
他の動物たちも、先生が留守の間は家の中をできるだけ綺麗に片づけたりします。
とは言っても、従順な動物たちばかりではなく、
例えば、毎年夏になるとロンドンからやってくるロンドンの下町訛りのスズメは
議論好きで、他の鳥に悪態をついたりします。
先生が動物の言葉を研究するきっかけとなったオウムの「ポリネシア」は、
しっかりもので口やかましいおばさんのような感じで、皆をテキパキと誘導します。
ドリトル先生にとって動物は、可愛がる存在ではなく、対等な存在なのです。
動物だけではありません。
9歳のスタビンズ少年に対しても大人の友人のように扱います。
黒人の王子やインディアンの博物学者も大事な友達です。
人種差別などもちろん存在しません。
ドリトル先生の周りでは大人も子供も動物もみな対等なのです。
そこがとても心地いいです。
ドリトル先生たちは、外国での研究のため航海に出ます。
その過程で、知人を助けるために裁判の証人台に立ったり、
闘牛をやめさせるために闘牛士になったり、難破したり、浮島の王様をさせられたり、
次から次へと大忙しです。
先生は動物界では有名なので、どこに行っても動物たちが助けてくれ、
危機を乗り越えて行きます。
大人になった今読んでもなかなか面白かったです。
ところで、福岡ハカセの訳ですが、自然で読みやすかったです。
柔らかくほっこりするような印象でした。
今までにもエッセイなど何冊か読んだことがあるのですが、
どれもとても読みやすいですね。理系の人が書いた文章だとは思えません。
(理系の人に失礼ですか?)
特に「ルリボシカミキリの青―福岡ハカセができるまで (文春文庫)」というエッセイがよかったです。
おすすめです。
福岡 伸一
文藝春秋 (2012-09-04)
文藝春秋 (2012-09-04)
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