2014年9月22日

ショーン・タンの『アライバル』を読んだ

アライバル
ショーン・タン
河出書房新社


文字のない、大人向けの絵本です。
私は知らなかったんですが、数年前に話題になったのだそうです。
図書館で見かけて、セピア色の絵の雰囲気に惹かれて手に取りました。
その後一気に読みました。
絵だけの本です。文字は一切ありません。
でも「読んだ」気になるくらい繊細に書き込まれた絵本でした。

妻と幼い娘を残し、異国へ向かう船に乗り込むお父さん。
お父さんの何とも言えない表情にぐっと心を掴まれます。
辿り着いた異国の地は、言葉も食べ物も鳥や動物さえも祖国のものと違っていました。
(祖国のものと違うというより、地球上には存在しないものです。)

私は、その異国の地の、壮大で幻想的な光景にすっかり心を奪われてしまいました。
未来都市と、古代都市と、どこか遠くの星の文明が混ぜ合わさったようなイメージです。
(ここに画像は載せられませんが、興味を持たれた方は是非とも「ショーンタン アライバル」で画像検索してみてください!)
へんてこりんな動物たち(これがかわいい!)や、
つるんとした形の野菜や果物にも興味津々になります。
一面セピア色なので、色のない夢の中の出来事のようです。

作者のショーン・タンという方は、オーストラリア在住なのですが、
お父さんがマレーシアからの移民だそうで、
この物語の背景にはそういった事情もあるようです。
物語の中には、主人公のお父さん以外にも、
複雑な事情を抱えて祖国を離れた人たちがたくさん登場します。

お父さんは最終的には生活の基盤を整えて家族を呼び寄せるのですが、
異国の地で大成功を収めるとか、そんな華やかな展開ではないところが
逆に好感を持てました。
絵の美しさだけでも十分楽しめるし、
不安を抱えながらも新しい環境に飛び込もうとする人には
勇気をもらえる内容だと思います。



未来都市風なのにノスタルジックな雰囲気がめちゃ好きかも。
他の本も見てみたいけどあまり本屋に置いてない…

ロスト・シング
ショーン タン
河出書房新社


遠い町から来た話
ショーン タン
河出書房新社


レッドツリー
ショーン タン
今人舎



こちらはアライバルの原書版だそうです。
The Arrival
Shaun Tan
Arthur a Levine