2013年3月2日

貴婦人と一角獣がやってくる!

The lady and the unicorn Taste

パリのクリュニー中世美術館に収蔵されている
「貴婦人と一角獣」のタピスリーがやってくるらしいです。

フランス国立クリュニー中世美術館所蔵 貴婦人と一角獣展
東京展:2013年4月24日から(国立新美術館)
大阪展:2013年7月27日から(国立国際美術館)
詳しくは公式サイトをどうぞ。
http://www.lady-unicorn.jp
The Lady and the unicorn Desire

「貴婦人と一角獣」は15世紀末に織られたとされる6面のタピスリー(英語でタペストリー)で、そのうち5面は「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」を表しますが、残る1面「我が唯一の望み」が何を表しているのかは諸説あるものの謎のままなのだそうです。
右がその「我が唯一の望み」です。

数年前、このタピスリーのことを、
トレーシー・シュヴァリエという方が書いた
「貴婦人と一角獣」という本で知りました。



たまたま何かの雑誌の本特集で紹介されていて、
おもしろそうだったので読んだのですが、
まさか本物のタピスリーを日本国内で見られる日が来るとは!

本の内容は、このタピスリーの制作に関わる、
絵師、依頼主の貴族、織師とその周囲の人々の人間模様を描いたフィクションです。
フィクションとはいえ、織られた時代や依頼主、工房があった地域などは
妥当な推測に基づいて書かれているのだそう。

章ごとに語り手が替わり、複数の人間の視点で物語が進んでいきます。
そのため誰か一人に肩入れすることなく、
登場人物それぞれの思いや喜び、悲しみを汲みながら読んでいけます。

主人公は、タピスリーの下絵の依頼を受けた「ニコラ・デジノサン」という絵師で、
容姿端麗、自信家で野心家、鼻持ちならないパリッ子、
あちこちの女をくどいては孕ませてしまったりする、
とんでもなく最低な男なんだけども、仕事にはプライドを持っていて才能もある、
という、現代のドラマにもでてきそうなタイプです。

そこに、依頼主の妻で人生に絶望して修道院に入りたがっているジュヌヴィエーヴや、
その娘で思春期真っ只中の中二病のようなクロード、
受け付けない男と結婚させられそうになっている織元の娘アリエノール、
その母クリスティーヌなど、
それぞれの事情を抱えた女性たちが絡んでいき、
タピスリーの貴婦人のモデルになっていきます。

スーパーヒーローも悲劇のヒロインもでてこないし、
最後もハッピーエンドとは言えない、もやもやした終わり方でしたが、
娯楽映画っぽくないところが味わい深くてよかったです。

また、当時の絵師の地位や織元の仕事のたいへんさ、
作品に対する思いなども知れて興味深かったです。
そういう目でタピスリーを鑑賞すれば、より楽しめそうです。

絶対見に行くぞ!


翻訳:木下 哲夫
出版社:白水社
発売日:2013/03/26
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映画にもなったこちらの本もトレイシーさんの作品です。
こちらもおもしろかったです。

原著:Tracy Chevalier
出版社:白水社
発売日:2004/03
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