2012年7月5日

白の古代ギリシャ文明、覆る。

2006 01 21 Athènes Parthénon

先日NHKの「知られざる大英博物館」の第2集古代ギリシャ編を見ました。
触りだけ見て、後は録画で見ようと思ってたのに、
しっかり1時間見入ってしまいました。いやー。おもしろかった。

ギリシャ文明といえば、
白い彫刻に白い神殿の「白い文明」だと思われていましたが、
実はそれは作られたイメージだったということがわかってきたのだそうです。

トロイヘッドと呼ばれる大理石の彫刻に特殊なライトを当てると、
今は真っ白に見える黒目の部分に、もともとは青色が塗られていたことが判明。


この事をきっかけに世界各地で調査が行われるようになり、
実は、白い彫刻も神殿も、元々は極彩色に彩られていた、
ということがわかってきた!とのこと。

そして、青い目に使われていた顔料は、
古代エジプトの壁画に使われていた青い顔料、
「エジプシャン・ブルー」と同じものであった!

という発見から、次々にいろんなことがわかってきたのだそう。
まとめてみると・・・

  • 7世紀以前、ギリシャはエジプトとは比べ物にならないくらい貧しい国だった。
  • エジプトは隣国との戦争に明け暮れ、兵力が不足していたので他国へ傭兵を募集した。
  • 傭兵募集のお知らせを受け、ギリシャから続々エジプトや西アジアへ雇われていった。
  • Abu Simbel - frontal
    ギリシャの傭兵たちは、エジプトや西アジアの高度な文化や技術に触れ驚いた。
    (アブシンベル神殿には、ギリシャ人兵士によるものと思われる落書きが残っている)
  • 7世紀ごろ、エジプトや西アジアの文明を吸収した傭兵たちが続々と帰ってきた。
  • 持ち帰った知識を元に、ギリシャ文明が一気に花開いた。


    時は流れる・・・

  • Johann Joachim Winckelmann (Angelika Kaufmann)
    18世紀、ポンペイが発見される。
    ヨーロッパ中で古代芸術ブームが起こる
    ドイツの美術史家ヨハン・ヴィンケルマンは断言してしまう。
    「これはギリシャ人にしか成しえない純粋で高度な白い文明である!」

  • 時は産業革命の時代。西洋が世界で優位に立つための歴史的根拠として、
    ヴィンケルマンの考えを利用しようとする。
    さらに19世紀、ヴィクトリア女王が着た純白のウェディングドレスがヨーロッパ中で流行。
    白い色=純粋で穢れないものだ、というイメージが定着。

  • 白いギリシャ彫刻が大人気!
  • 彫刻にわずかに残っていた色も、「何かの間違いだろう・悪趣味だ」とされてしまう。

  • Elgin Marbles 162
    1930年の大英博物館内での洗浄作業において、スポンサーのデュヴィーン卿の指示で彫刻が真っ白に削られるというスキャンダルが起きる!

こんな感じでしょうか。
そして今、最新の技術を駆使して、
変えられてしまった歴史を取り戻そうとしているんですね。

ミステリー仕立てで見ごたえありました。
次回は日本のお話ですか。こちらも楽しみ!
こんな感じの番組、どんどんやってほしい!


本が出たみたいですよ。
その他:NHK「知られざる大英博物館」プロジェクト
出版社:NHK出版
発売日:2012/07/25
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こんな本でてました。
洗浄作業のお話ではないみたいですが、おもしろそう。
著:朽木 ゆり子
出版社:新潮社
発売日:2004/09/18
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